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イード・マーケティングセミナー2009『ビジネスを動かすデザイン思考』 報告 その2  

2009年 09月 19日

戦略デザインの方法
Strategic design from Products to Companies

次の講演者はジョセフ・ホラキス Joseph Forakis氏である。富士通のNEXDの開発を担当したという。自己紹介によると、彼は1962年にニューヨークで生まれた。現在ジョン前田が学長をしているRISD(the Rhode Island School of Design)を1985年に卒業。専攻はIndustrial Designであった。その後ミラノのドムスアカデミー(the Domus Academy)に留学してそのあとはミラノに住んでいる。 1993年に Joseph Forakis Designをミラノに設立。その後、1999-2002にはモトローラ社デザインディレクターをつとめ、主なクライアント:スウォッチ、スワロフスキー、LG電子、マジスなどである。

http://www.forakis.com/

スタジオは規模が小さいブティックスタジオを意識して維持している一方で、マルチディシプリナリー・インターナショナルコラボレーションを上手に行っていくことを心がけており、2つの柱があるという。一つは規模の小さなイタリアの家具照明デザイン中心の会社へのデザインの提供である。感情表現が豊かな「家」関連のデザインを心がけているという。もう一つはマルチナショナルで戦略的に動く会社への戦略コンサルティングである。テクノロジー中心のSumsong, Panasonic, LGといった会社や、Yamahaなどが日本ではクライアントであるという。モトローラ、ロジテックのマウス、スウォッチ アイロニーシリーズからスウォッチトークのデザイン言語開発に参加し、インターフェイスデザインも行うという。

こうした企業とのプロダクトを見せながら、プロダクトデザイナーのプレゼンは色ぽいプロダクトなどの写真を並べるのが普通なのですが、今日の話はこうした普通のプレゼンテーションはほんの少しで、考えることについて議論したいと述べて、経営戦略ツールとしてのアイコニック・デザインを説明した。方法としては僕が考えているデザイン思考2.0と同じ問題意識をもっているものであって、イノベーションの方法論にとどまっていたデザイン思考を超える試みであった。

ちょっと詳しくなるが説明しておこう。

デザインという行為はイノベーションそのものである。イノベーションを行うのがデザイナーの仕事なのだ。では何処にイノベーションを行うべきなのか。それは企業が顧客に対してauthenticityを提供する分野であるという。正直に自信をもって顧客にサービスを提供できる分野でイノベーションをおこなう。そのためにはまずマーケティングで普通に行われている強みと弱みの分析をするという。どのような企業文化をもっているのか、をしらべ、単純なミッションステートメントを超えて、他の会社と差別化したサービスやプロダクトを提供できる領域は何かを見つけ出すのだという。

そのためのプロセスがなかなか分かりやすかった。調査と分析を二つに分けている。

Research&Anaysis1:

企業文化を強化して進化させる方法を考える。つまり自分の会社のサービスや製品の市場をしっかりとみて、その可能性を考える。普通の言葉で言えばある市場に対して複数の企業は同じ方法でアプローチしていることがほとんどだ。そのときに違う方法で市場にアプローチできないかを自社の強みを元に考えるのである。これは古典的な競争戦略であるが、こうしたマクロ的な視点をデザイン思考に取り入れたときの効果は大きい。なにをどのようにイノベーションするのかを決めるのである

Reseach&Analysis2

これはミクロなアプローチである。顧客は何をしているのかを民族誌を活用したり文化分析を行ったりして調べる。これは従来のマーケティングリサーチの枠を超えたものでなくてはならない。こうした調査に基づいてイノベーションを何度も繰り返す。そのときに注意することは「破壊的技術」の存在である。マーケットを壊す技術は現在の市場とは別のところからやってくるのだ。

「破壊的技術」とはどのようなものか。これは非常に大事な概念なので僕から説明を付け加えておこう。『イノベーションのジレンマ』クレイトン・M・クリステンゼン(Clayton M. Christensen)が述べていることだが、高度に進んだ技術が市場で勝利をおさめるわけではない、ということである。クリステンゼンはハードデスクを例として説明している。高速で大規模で、そして高価なハードデスクの開発が進んでいたときに、スピードが遅くてあまり容量がないハードデスクが登場してきて市場を席巻した。その理由は消費者は小型で安価なハードデスクを普及し始めていたパーソナルコンピュータに搭載したいと思っていたのだ。つまり、高度な技術が成功するのではなくて、顧客のニーズに応えるテクノロジーが市場で勝利するのだ。多くの場合、それは普通で少し性能が悪い技術であることが多い。だがそれが市場を破壊する。なので破壊的技術なのである。iPodやiPhoneはその典型だし、パーソナルコンピューターのCPUもその産物である。このことが分かっているハイテク企業経営陣は驚くほど少ない。

次に、直接・非直接の競合を調べるという。現在ノキアの競合相手はもはやかつてのモトローラやLGではなくなってきている。現在のは敵はアップルである。誰と競争するのかを決めることが大事だというのだ。

まとめると、会社の文化のマーケットの戦略の間にコアバリューがある。ここでイノベーションをするべきで、ここを戦略的イノベーションの場所と呼ぶ。ここでイノベーションを続けることでブランドが生成される。簡単なようだが、普通の企業は他社と製品において差別化することなく、同じ市場にむけて、広告戦略を立てて商品を売ろうとしている。だがこの戦略はもうふるいのだ。

イノベーションはハードイノベーション(Hard innovation)ソフトイノベーション(Soft innovation)に分けられる。第一は顧客に約束した価値をいかにして生み出すかというイノベーションである。プロダクトでもプロダクトを使って得られる経験でもかまわない。大事なことは約束した価値を生み出しそれを顧客に届けることである。そのためには市場を知らなくてはいけないし、約束した価値を届けるための技術開発も必要である。また製品の設計を行い製造するプロセスをしっかりと管理することも必要になる。インタラクションデザインプロダクトデザインパッケージデザインにも心を配らなくてはいけない。こうした活動をハードイノベーションとよぶ。これは分かりやすい。だがハードイノベーションを行っても、約束した価値を顧客に届けることは難しい。別の種類のイノベーションが必要なのだ。これをソフトイノベーションと呼ぶ。約束した価値を顧客に伝えるためのコミュニケーションコラボレーションの方法のイノベーションが必要なのだ。それは従来小売店舗のデザインとか、サービスデザインとか、広告・広報、あるいはマーケティングと呼ばれてきた分野がカバーしていたところだ。アップル社はハードイノベーションとソフトイノベーションを巧みに組み合わせている典型である。

今回富士通のために、富士通の強みを生かす技術を活用しつつ、きちっとした顧客調査も行って、新しいユーザーシナリオをつくった。そのキーコンセプトを紹介したい。ストーリーボードを作りアイデアを技術的に作る方法で19のユーザーシナリオをつくった。それぞれビジネスプロポジション(商品を買ってもらうための明確なメッセージ)をもつ。デザインモノからサービスへ、そして経験を経てブランド育成の方法へと進化していく流れが必要である。

以上をふまえて提示されたキーコンセプトが以下である。

シームレスソサエティ

都市のインフラは古いモノから新しいモノまでが混在している。この間をスムースに移動する仕組みを作る。

2Dプロダクト
電子ペーパーをつかって表面を目的によって変える。二次元だが多様な使い方が可能なプロダクトとなる。

Materialized Digital Teritory

デジタルインターフェイスを実際のフィジカルオブジェクトに置き換える。

Digital Backlash
デジタルで出来ることは終わってしまった。

Avoiding Emmission
テレビ電話などを活用する。

結論的にはごく普通のコンセプトであったが、広告代理店や広告代理店出身のコンセプト提供のコンサルティングビジネスと根本的に異なるところは、彼はこのコンセプトでプロトタイプまで作れることである。プロダクトデザイン力を見てもそれほど突出しているとは思わないし、イノベーションコンサルティングの内容も気の利いたシンクタンクであれば行える。だが、この二つを一つのサービスとして行うというところがジョセフ・ホラキスの特徴だ。ここは積極的に学びたいところである。

最後にイタリアのデザイン誌Interniでデザイン思考の特集があり彼が紹介されているということが付け加えられた。

http://www.internimagazine.it/

by naohito-okude | 2009-09-19 16:54 | 講演会・展示会

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