奥出直人のJazz的生活


by naohito-okude

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Okude/Kashiwagi Studio 発足

9月22日

霞町スタジオにて柏樹良さんと新しいデザインコンサルティングの方向性とクライアントに向けてのプレゼンテーションの準備ミーティングを行う。Okude/Kashiwagi Studioを結成しようと相談。デザインスタジオとはあえて呼ばない。

いま大学の方の研究も手伝ってくれている柏樹良さんは武蔵美をでてSONYに入社していくつかのプロダクトデザインを行った。下記はその頃のいくつかの作品の一つ。

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そのあと家具メーカーのアルフレックスに転職。ソファーなどのデザインを手がけた。

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その後も、いくつもの作品を手がけた。なかでもコンポーザーは2000年Gデザインの金賞をとった傑作である。

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10年以上のつきあいであり、アルフレックスのWebサイトの立ち上げから新たらしい商品ラインの開発など一緒に行った仕事もいくつかあり、また僕の方でも関西電力との情報住宅の開発では全面的にインテリアデザインの協力をお願いした。

そのころからインダストリアルデザインとインテリアデザインとインタラクションデザインが融合する予感はあった。またフィリップスデザインがサローネに家具とインタラクションデザインを融合させた作品を出展したりしてきた。それがQ4 Pluggedだが、ユビキタスコンピューティングが登場するまではコンピュータの存在自体が障害となって、インタラクションデザインとインテリアデザインの統合はむつかしかった。また様々なデバイスのデザインをおこなうプロダクトデザインをインテリアデザインの中に取り込むこともあまりうまくいっていない。

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我々の日常生活のなかに道具や家具やあるいは情報メディアをどのようにとけ込ませていくか。この問題にデザインの立場から正面切って取り組んでいる例はない。たとえば新幹線や飛行機に乗ってみると分かることだが、全くデザイン言語が違うものをただ集めているだけである。キメラのような異質感が漂う。もちろん「隠す」という手はある。だが、隠しても使うときにはむき出しになるのだ。

だからといって家具のデザイン言語に家電が従うことも、家電のデザイン言語に家具が従うことも解決策にはならない。コンピュータのデザイン言語に従うことは論外だ。だがこの状況に大きな変化が起こってきている。それはまずコンピュータがユビキタスコンピューティングの登場によって表舞台から姿を消し始めた。またプロダクトデザインが、やはり機械部分が電子機器に置き換わることで、機械の制約から逃れることが出来るようになった。いまこそが新しいデザイン言語創造の好機なのだ。


大学の方ではこうした考えをもとに新しい詩学・美学の構築を試みている。オプティマの霞町スタジオでは実践的な課題をこなしている。いま準備しているのはデザイン思考2.0と柏樹さんと準備している新しいデザイン言語を開発するコンサルタントの二本軸である。交通から都市開発まで対象は多岐にわたる。この役割をになうべく、Okude/Kashiwagi Studioを発足させたわけだ。

3時間ほど作業をしてみたが、なかなか快調。10年以上一緒に仕事をしてきた経験もあり相手の手の内はある程度知り尽くしている。その上で、新しい目標を定めて戦略的に作業をするのは楽しい。ホテル、マンション、車、列車、飛行機などインテリア、インダストリー、そしてメディアが複合的に存在している環境は珍しくない。ここを総合的にあつかって、デザイン言語を統一してさらにサービスデザインまで導入することが非常に大切なのである。来週から具体的な企画をクライアントに順番にプレゼンしていくことになる。
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by naohito-okude | 2009-09-23 18:36 | ミーティング

KBC Brand-New Challenge

9月19日土曜日

慶應の学生の団体がデザイン思考でなにかをつくるという合宿をやって
その成果発表を五反田の大日本印刷の場所で行うので、12時から夜7時くらい
までつきあった。坂井さんと平田さんと僕がデザイン分野からこのコンペに審査員として参加。

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この試みはKBC Brand-New Challengeと言って、今年で2回目のプロトタイピングコンテストである。プロトタイピングとはプロトタイプ(試作品)をつくることで、デザイン思考を用いてチームごとにプロトタイプを作製し、その出来を競うものだ。6日間、合宿をして成果を発表する。

http://www.keio-contest.org/brand_new_challenge/about.html

http://www.keio-contest.org/brand_new_challenge/summary.html


審査委員は

坂井 直樹
コンセプター / 株式会社ウォーターデザインスコープ 代表
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授

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平田 智彦
株式会社ziba tokyo
代表取締役

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宮地 恵美
株式会社MMインキュベーションパートナーズ
代表取締役

森 靖孝
メンター三田会
会長代行

早めに集まって概要を説明したパンフレットを渡されたが、その水準にびっくり。Webにあげるように助言。デザイン思考のプロセスを説明した本は『創造する会社』と僕の『デザイン思考の道具箱』があるが、それをよく勉強した上に、さらにワークショップを運営していくファシリテーターの役割を自分たちでしかりと出来るように考え、また準備している。加えて、実際にワークショップを行った。具体的なプロセスと活動の記録をまとめると、ちょっと他にはない素晴らしい記録になる。

僕は昨年に引き続き審査委員長である。昨年頼まれたとき、実はちょっと面倒だなと思った。デザイン思考の入門といってもSFC時代は半年15回かけて教えていたし、KMDになってからも週2回で13回続けて教えている内容だ。KBCの場合も合宿をしたりして実質的な時間は結構使っているのだが、はたしてそれで出来るのだろうかという危惧があった。ところが結果はびっくりするほど水準の高い発表が続いた。今年は楽しみにしてきた。

テーマは身体を洗う。21世紀は身体性をどうデザインしていくかが課題なのでなかなかいい選択だ。発表は4チーム。詳細は今後の知財の取り扱いなどがあるから省略するが、基本的に着眼点とイノベーションをおこなう手際は非常にいい。というかプロ並みだ。審査する側の質問もするどくなる。
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1: チームインセンティブは手を洗うという行為に注目してプロダクトを提案。5感を直接扱うアプローチは秀逸。坂井さんは「プレゼンの時は自分の提案の強みだけではなくて弱みも言うのがプロなのだが、君たちの弱みは?」と鋭い質問。平田さんは提案された形をみるとプロダクトデザイナーとして気になる点があると、質問。僕はアイデアの数が少ないので提案に深みがないとコメント。しかし、この審査員からこのレベルのコメントを引き出すのは凄いよ。

2: チームアケトコは、非常に斬新な手洗い方法を提案。平田さんは手洗いの効果を視覚化する戦略について、坂井さんは手洗い以外は考えなかったと質問。僕はプロダクトのイノベーションは完成しているので、次のサービスイノベーションを、とコメント。このチームは最優秀賞をとった。



3: チーム新事業はお風呂で使う新しい仕組みを提案。おもちゃで楽しいのか、教育目的なのか、という問題があるというのが僕のコメント。平田さんは見るところとするところのデザインの詰めが甘いとレビュー。坂井さんは子供は何をやっても飽きるがその対策は、と質問。

4: チーム ハッピーイノベーションはバスルームと洗面所の間の空間に注目。市場ポテンシャルの非常に高いところを攻めた。

総評を知財に触れない範囲でまとめると、

平田さん
1:うまくするとひっとするかもしれないけど、アイデアの広げ方が少ない。5感に注目したのが言い。
2:良くできていた。方法が面白い。色が付くことがメリットに変わっていくところがおもしろい。
3:ご褒美とでてきたところが>>浴育がよかったが、大人でも楽しめるやり方がある。どちらで行くか。いろいろ可能性がある
4:洗いストッパーは面白かったが、もっと感覚的な満足があったのではないか。アイデアの検証は他者をみるだけではなくて、自分でも体験して確認をしないといけない。

メンター三田会 森さん
1:5感ストラップ。着眼は言い。だが解きたい問題は何だったのか?女子高生の反応?
2:着眼点はいい。実用化までは難しいのではないか。
3:お風呂を楽しむ>>あるいは浴育か?
4:着眼点はいいが、掘り下げが足りない。

宮地さん
1:小さくまとまっている。高校一年生すぐ売れるか
2:普及の戦略がいろいろありそう
3:風呂場をたのしく:プロトタイプをつくったのがいい。
4:着眼点が非常にいい。自分が使っていないのが問題

坂井さん
1:水道や洗剤のないところでも綺麗になる:ターゲットが狭い
2:とてもいい。色の変化で清潔のレベルが伝わるようになればいい。
3:先におもちゃありき>>プロト能力はいい
4:ソリューションのバリエーションがもっとあるのでは。

慶應の学部全体から学生が参加していることでよりイノベーションのレベルが高まっていく。この学生の活動はこれからが楽しみだ。最優秀チームはビジネスモデルのコンペに挑戦することになった。イノベーションしたプロダクトとサービスを持っているチームがビジネスモデルを考えることはとても素晴らしいと思う。
コンテストの総評と表彰式の写真を載せておく。

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by naohito-okude | 2009-09-21 00:05 | 講演会・展示会
戦略デザインの方法
Strategic design from Products to Companies

次の講演者はジョセフ・ホラキス Joseph Forakis氏である。富士通のNEXDの開発を担当したという。自己紹介によると、彼は1962年にニューヨークで生まれた。現在ジョン前田が学長をしているRISD(the Rhode Island School of Design)を1985年に卒業。専攻はIndustrial Designであった。その後ミラノのドムスアカデミー(the Domus Academy)に留学してそのあとはミラノに住んでいる。 1993年に Joseph Forakis Designをミラノに設立。その後、1999-2002にはモトローラ社デザインディレクターをつとめ、主なクライアント:スウォッチ、スワロフスキー、LG電子、マジスなどである。

http://www.forakis.com/

スタジオは規模が小さいブティックスタジオを意識して維持している一方で、マルチディシプリナリー・インターナショナルコラボレーションを上手に行っていくことを心がけており、2つの柱があるという。一つは規模の小さなイタリアの家具照明デザイン中心の会社へのデザインの提供である。感情表現が豊かな「家」関連のデザインを心がけているという。もう一つはマルチナショナルで戦略的に動く会社への戦略コンサルティングである。テクノロジー中心のSumsong, Panasonic, LGといった会社や、Yamahaなどが日本ではクライアントであるという。モトローラ、ロジテックのマウス、スウォッチ アイロニーシリーズからスウォッチトークのデザイン言語開発に参加し、インターフェイスデザインも行うという。

こうした企業とのプロダクトを見せながら、プロダクトデザイナーのプレゼンは色ぽいプロダクトなどの写真を並べるのが普通なのですが、今日の話はこうした普通のプレゼンテーションはほんの少しで、考えることについて議論したいと述べて、経営戦略ツールとしてのアイコニック・デザインを説明した。方法としては僕が考えているデザイン思考2.0と同じ問題意識をもっているものであって、イノベーションの方法論にとどまっていたデザイン思考を超える試みであった。

ちょっと詳しくなるが説明しておこう。

デザインという行為はイノベーションそのものである。イノベーションを行うのがデザイナーの仕事なのだ。では何処にイノベーションを行うべきなのか。それは企業が顧客に対してauthenticityを提供する分野であるという。正直に自信をもって顧客にサービスを提供できる分野でイノベーションをおこなう。そのためにはまずマーケティングで普通に行われている強みと弱みの分析をするという。どのような企業文化をもっているのか、をしらべ、単純なミッションステートメントを超えて、他の会社と差別化したサービスやプロダクトを提供できる領域は何かを見つけ出すのだという。

そのためのプロセスがなかなか分かりやすかった。調査と分析を二つに分けている。

Research&Anaysis1:

企業文化を強化して進化させる方法を考える。つまり自分の会社のサービスや製品の市場をしっかりとみて、その可能性を考える。普通の言葉で言えばある市場に対して複数の企業は同じ方法でアプローチしていることがほとんどだ。そのときに違う方法で市場にアプローチできないかを自社の強みを元に考えるのである。これは古典的な競争戦略であるが、こうしたマクロ的な視点をデザイン思考に取り入れたときの効果は大きい。なにをどのようにイノベーションするのかを決めるのである

Reseach&Analysis2

これはミクロなアプローチである。顧客は何をしているのかを民族誌を活用したり文化分析を行ったりして調べる。これは従来のマーケティングリサーチの枠を超えたものでなくてはならない。こうした調査に基づいてイノベーションを何度も繰り返す。そのときに注意することは「破壊的技術」の存在である。マーケットを壊す技術は現在の市場とは別のところからやってくるのだ。

「破壊的技術」とはどのようなものか。これは非常に大事な概念なので僕から説明を付け加えておこう。『イノベーションのジレンマ』クレイトン・M・クリステンゼン(Clayton M. Christensen)が述べていることだが、高度に進んだ技術が市場で勝利をおさめるわけではない、ということである。クリステンゼンはハードデスクを例として説明している。高速で大規模で、そして高価なハードデスクの開発が進んでいたときに、スピードが遅くてあまり容量がないハードデスクが登場してきて市場を席巻した。その理由は消費者は小型で安価なハードデスクを普及し始めていたパーソナルコンピュータに搭載したいと思っていたのだ。つまり、高度な技術が成功するのではなくて、顧客のニーズに応えるテクノロジーが市場で勝利するのだ。多くの場合、それは普通で少し性能が悪い技術であることが多い。だがそれが市場を破壊する。なので破壊的技術なのである。iPodやiPhoneはその典型だし、パーソナルコンピューターのCPUもその産物である。このことが分かっているハイテク企業経営陣は驚くほど少ない。

次に、直接・非直接の競合を調べるという。現在ノキアの競合相手はもはやかつてのモトローラやLGではなくなってきている。現在のは敵はアップルである。誰と競争するのかを決めることが大事だというのだ。

まとめると、会社の文化のマーケットの戦略の間にコアバリューがある。ここでイノベーションをするべきで、ここを戦略的イノベーションの場所と呼ぶ。ここでイノベーションを続けることでブランドが生成される。簡単なようだが、普通の企業は他社と製品において差別化することなく、同じ市場にむけて、広告戦略を立てて商品を売ろうとしている。だがこの戦略はもうふるいのだ。

イノベーションはハードイノベーション(Hard innovation)ソフトイノベーション(Soft innovation)に分けられる。第一は顧客に約束した価値をいかにして生み出すかというイノベーションである。プロダクトでもプロダクトを使って得られる経験でもかまわない。大事なことは約束した価値を生み出しそれを顧客に届けることである。そのためには市場を知らなくてはいけないし、約束した価値を届けるための技術開発も必要である。また製品の設計を行い製造するプロセスをしっかりと管理することも必要になる。インタラクションデザインプロダクトデザインパッケージデザインにも心を配らなくてはいけない。こうした活動をハードイノベーションとよぶ。これは分かりやすい。だがハードイノベーションを行っても、約束した価値を顧客に届けることは難しい。別の種類のイノベーションが必要なのだ。これをソフトイノベーションと呼ぶ。約束した価値を顧客に伝えるためのコミュニケーションコラボレーションの方法のイノベーションが必要なのだ。それは従来小売店舗のデザインとか、サービスデザインとか、広告・広報、あるいはマーケティングと呼ばれてきた分野がカバーしていたところだ。アップル社はハードイノベーションとソフトイノベーションを巧みに組み合わせている典型である。

今回富士通のために、富士通の強みを生かす技術を活用しつつ、きちっとした顧客調査も行って、新しいユーザーシナリオをつくった。そのキーコンセプトを紹介したい。ストーリーボードを作りアイデアを技術的に作る方法で19のユーザーシナリオをつくった。それぞれビジネスプロポジション(商品を買ってもらうための明確なメッセージ)をもつ。デザインモノからサービスへ、そして経験を経てブランド育成の方法へと進化していく流れが必要である。

以上をふまえて提示されたキーコンセプトが以下である。

シームレスソサエティ

都市のインフラは古いモノから新しいモノまでが混在している。この間をスムースに移動する仕組みを作る。

2Dプロダクト
電子ペーパーをつかって表面を目的によって変える。二次元だが多様な使い方が可能なプロダクトとなる。

Materialized Digital Teritory

デジタルインターフェイスを実際のフィジカルオブジェクトに置き換える。

Digital Backlash
デジタルで出来ることは終わってしまった。

Avoiding Emmission
テレビ電話などを活用する。

結論的にはごく普通のコンセプトであったが、広告代理店や広告代理店出身のコンセプト提供のコンサルティングビジネスと根本的に異なるところは、彼はこのコンセプトでプロトタイプまで作れることである。プロダクトデザイン力を見てもそれほど突出しているとは思わないし、イノベーションコンサルティングの内容も気の利いたシンクタンクであれば行える。だが、この二つを一つのサービスとして行うというところがジョセフ・ホラキスの特徴だ。ここは積極的に学びたいところである。

最後にイタリアのデザイン誌Interniでデザイン思考の特集があり彼が紹介されているということが付け加えられた。

http://www.internimagazine.it/
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by naohito-okude | 2009-09-19 16:54 | 講演会・展示会
六本木アクシスギャラリーでデザイン思考の講演会で話をした。

http://www.iid.co.jp/seminar2009/

デザイン思考2.0について語る

デザイン思考がようやく注目されいろいろなところでイノベーションワークショップが行われるようになった。だが実はイノベーションそのものはそれほど難しくない。大切なのはどの領域でイノベーションを行うべきかという戦略的思考と、イノベーションをどのように実現するかという実践の戦略である。つまりイノベーションの方法であるデザイン思考そのものは戦術に過ぎない。

IDEOや多くのアメリカ・イギリス系のデザイン思考コンサルタントと僕が代表をしているオプティマが提唱するデザイン思考との違いはここにあって、『デザイン思考の道具箱』のなかで哲学とビジョンと述べているところがそれだ。ここのところを経営戦略としてしっかりと充実させることが必要である。また経営戦略といっても、競争力を高めて自分だけ高い利益を上げる、ということが社会的に許されなくなっている。企業は社会的責任を問われている。さらにいま社会が直面している環境や高齢化社会にどのように対応していくのかといったことも大切だ。またこうしたことがビジネスチャンスを生む。

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講演では新しく登場してきている移動体中心のコミュニケーションインフラストラクチャーが可能にする新しいビジネスのチャンスとしてサービスや経験の充実をあげ、その領域でイノベーションを起こすための戦略を説明した。そのあと領域をきめてデザイン思考をいかに実践するかを説明した。民族誌的調査に加えて、Tinkeringという新しい方法も紹介した。従来「作って考える build to think」と言われてきたことと同じだが、新しい工作機器の登場で顧客が実際に手に取ってみることが出来るレベルのプロトタイプを開発できるようになってきている。ここまでイノベーションに関わる人は責任を持つ必要がある。そして、実際にイノベーションしたサービスやプロダクトを「産業化」しなくてはならない。そのために、多くの関係する企業とコラボレーションを構築して行かなくてはいけない。この作業もある意味イノベーションである。

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具体的な目的を戦略的に設定することでイノベーションは「ビジネスモデルは何か」というおなじみの質問に答えることが出来る。その方法を身に付けないと、デザイン思考を学んでも自己満足のアイデア創造ワークショップで終わってしまうのだ。

「デザインイノベーションによるクラウドサービスビジネスの進化」

富士通 森岡 亮(もりおか まこと)

今回の講演は森岡さんに依頼されたのだが、彼の肩書きは富士通デザイン株式会社 デザイン企画開発部 部長(これが本職だ) 兼、富士通株式会社 サービスビジネス本部 デザインプロデューサー 兼、富士通株式会社 ソフトウェア計画本部 開発企画統括部 デザインプロデューサーである。富士通は巨大産業で縦割りであり、研究所もデザイン部門も別の会社である。これでは総合的なサービスをデザインすることはほぼ不可能に近い。なので、森岡さんは兼務をして自分自身の中でコラボレーションが出来るような体制を作り出している。

発表はトラスティッドクラウド時代のデザインについて。生活、仕事の方法をデザインする。富士通のような巨大企業でデザインに何が出来るかを考えてきた。現在人間がコンピュータ環境の中でくらしている。そのとき、ハードのプロダクト、ソフトのデザイン、ファシリティのデザインを一体になってどのように行うか?についての発表。基本的なデザイン思考の方法である調査、ペルソナ、プロトタイプ、設計を何処に活用するか。

足下のマーケットを見抜くという方法を提案していた。戦略立案としてわるくない。そこから問題の本質の理解と気付きをおこなってデザインプロトタイプを行うという。プロダクトのデザインではなくてサービスのデザインへ、つまり体験価値、思いやり、コミュニティ価値を大事にしたいという。ここまでの話をマーケティングのミーティングで聞いたならば、なるほど、そうか、で終わるところだ。またこうした戦略的なことをいって、仕事が済んだと思う大企業の経営企画の人間は多い。だた、森岡さんはデザインの専門家である。戦略が決まると、具体的なプロトタイプを作る作業は得意である。

この立場から例に挙がったのは3つあった。

その1:金融店舗フィールド

金融店舗は新しいサービスを提供することが求められている。銀行の意味がかわり、きめ細かな利用者サービスが求められているにもかかわらず金融の店舗デザインは問題が多くて、トラブルも絶えない。実際、観察をしてみると「わかりやすさ」、「ホスピタリティ」、「コミュニケーションスタイル」の問題が多い。ここをデザインする可能性がある。いくつかのスケッチが紹介された。

その2:これからのオフィスのあり方

オフィス什器メーカーと共同で作業をしたが、よく考えると違うアプローチがある気がしている。アイデアを作ることは方法であり、一度覚えればどんどんでてくる。とすればそうした作業がらくにおこなえるようなオフィスをデザインすればいい。アイデアがどんどん浮かんでくるオフィスの環境をデザインする。もう一つはコミュニケーションの物理的なコストと環境負荷を高解像度のテレビ会議システム導入で改善する。そのための最適なデザインを考えてみたい。

オフィスの例に関してはそのとおりだ。ごく普通にオフィスの環境の再デザインをする時期に来ている。オフィス什器やコンピュータハードウェアを売っている時代ではない。


その3:コラボレーション環境を作る。

実際に顧客や他企業とコラボレーションしないとイノベーションは産業化しない。そのためにコラボレーションモデルを作った。それがNEXDプロジェクトである。具体的にはデザインテンプレートをつくり、顧客とビジネスにしていく。とりわけ、ITを意識しない体験価値のデザインを主眼とする。たとえば食のデザインを考えて、コラボレーションをおこない、あたらしいサービスのプロトタイプをつくるとか、ネットインフラを意識させないサービスをセンシング、リアルタイム、高速処理でおこなう、という種類のモノである。こうしたサービスのニーズはどこにあるのか?が一番の問題だ。つまりここで経営戦略の問題に戻っていくことになる。

具体的なビジネスの可能性をどうやって作っていけばいいかに関して、インスピレーションがわく話であった。
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by naohito-okude | 2009-09-19 07:29 | 講演会・展示会
9月17日 木曜日

八雲で行っているショーケースに井原慶子さんが訪問してくれた。彼女はレースクイーンから国際F3を走るレーサーに転身して一昨年までヨーロッパでレースを行っていた。26才でレーサーになり、女性で国際レースで転戦をするという希有な経験を積み重ねてきた。その苦労と挑戦のファイトが彼女の古い日記を読むと感じる。
blogのURLは二つ。現在ヨーロッパでのレース経験をまとめていて、blogに連載している。いずれまとめて改稿して出版されるという。楽しみ。

http://ameblo.jp/iharakeiko/
http://www.hobidas.com/blog/auto/ihara/

彼女の一番のお気に入りはDream Shower。
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これは自分のかわいがっている植物に遠隔で水をあげることが出来る、というものである。トマトの鉢の土の乾き具合をみて、一番いいときに水を与える。外出中や出張中にでもi-Phoneを振って、鉢に水をあげることが出来る。それなら自動で行えばいいと考えるのが今までだろう。だが、わざわざ気にして水をあげるところがエモーショナルデザインになっている。KMDの同僚のエイドリアン・チオクさんが作っているペットの鶏(!?、シンガポールではそうらしい)を遠隔でなぜたり、子供をねるまえに出張先のホテルから抱きしめたりする作品も同じである。相手を気遣う気持ちをデザインしている。

Plantrの前で、稲蔭さんと井原さんと僕の写真。

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Plantrのみんなとの写真。
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ピアニストでKMDの修士二年生でもある佐藤千尋さんが来たのでリビングのグランドピアノで一曲弾いてもらう。ドビュッシーのアラベスク第一番。

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最後にビールと軽食でご苦労様会。稲蔭さんがスピーチをして僕が乾杯の言葉。
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学生や若手の教員たちが非常に頑張ってショーケースを行ってくれた。どうもありがとう。
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ユビキタスコンピューティングという目に見えないコンピュータシステムに対して人間がアクセスして意味のある経験が出来る作品やモノを「ユビキタスコンテンツ」と名付けて、それはエンジニアリングの作品のように研究室内に存在するわけではなく、アートのように展示会や美術館の中に存在するわけでもなく、我々の日常世界のなかに存在する。そう考えて5年前に始めたプロジェクトであるが、結婚式をおこなう一軒家をかりて展示をおこなって、最初に考えたように日常生活の中で意味をもつデジタルのプロダクトを作ることが出来たと思う。また展示物のほとんどをネットワークに接続した。誰がいつ何をつかって遊んだかも分かるようにした。お遊びで入場するときにIDをわたし血液型占いをする。展示物を一通り遊んだ後、もう一度コンピュータにログインすると、たとえばO型の人間がどのくらいの割合でA型的遊び、B型的遊び、AB型的遊びをしたかの確率が表示される。A型っぽいO型だねえとか、表示される。これ自体は遊びなのだが、裏にはベイズネットワークというシステムが動いている。これも今回の大切な実験だ。人々が無意識に行動する記録とネットワークに繋がっているさまざまな作品とを連携させて意味を確率的に生み出していく。社会全体をダイナミックに感じながら日常生活を経験することが可能になる。

つながっているので妙なこともおこった。サウンドキャンディで入力した音をアマガタナで遊ぶときに再生することが出来る。広場で即興的に遊びを作り出すことが出来るのだ。これをみつけた学生たちは興奮して遊んでいた。さまざまな人の経験が空間に蓄積されて、それを様々な方法で活用することが出来るのだ。
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by naohito-okude | 2009-09-18 13:14 | 講演会・展示会
9月16日

午後にジャズ歌手のちゅうまけいこをKMDを案内した。彼女は都内で活躍する実力派のジャズ歌手。
http://blog.livedoor.jp/heart_horse_club
今日は横浜に一緒にライブに行くのだが、折角なので途中日吉で降りてもらってKMDを紹介。

都市メディアプロジェクトで、街を歩く人の行動をセンサーで調べて、今何をしているかを推測する。それをもとに新しいサービスの開発をしてる大学院生の安君がプロジェクトを説明。
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そのあと、メディカルプロジェクトについて林瑞恵さんが説明。きちんと説明できると言うことはそれだけ意味のあるプロジェクトをやっていると言うこと。安君と瑞恵さん、先生は鼻が高いよ。
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そのあと、横浜のモーションブルーに高木里代子のトリオ初出演を御祝いがてら聞きに行った。
音響が素晴らしいとてもいい場所。お客様もたっぷりと入っていた。
曲は

Someday My Prince Will Come
ビル・エバンス、マイルス・デイビスの名演奏があるデズニーの曲。最初の曲でありかなり緊張したと思うが、演奏はよかった。高木里代子特有のピアニズムがよく出ていた。本人はヤマハ育ちといっているが、音が粒だっていて、アドリブのフレーズに自分らしさがあってよいね。技法と音色にオリジナルなフレーズが加わって、これからどうなっていくのかねえ、とちゅうまさんと話す。マイルスの演奏のときのピアノはウィントン・ケリー。あんな音の厚みもあるピアニズムでした。

Redwine
オリジナル曲。

So What
Red Wineからベースの斉藤誠さんがエレベに持ち変える。5弦のベースだが、えっ、うまい。演奏はマイルスの演奏よりは大分早い気がした。ベース演奏のせいか、ポップス感にあふれているし、ピアノのアドリブも高木里代子のピアニズムがよく出ている。このポップス感覚がいい。ちゅうまさんは「ビヨンセも聞いていると、ジャズの長い歴史があって、いまのあの歌い方があると思う」との意見。ある時点からのポップミュージックはあきらかにジャズの伝統を背後に持っている。まあ両親や周りの年上の連中がジャズを聴いている中で自分の音楽性を形成して、それがいまの自分の演奏に反映している、という自然なことかもしれないけれど。僕は55才だけれど、こうした感覚は確かに感じる。ポップス感覚でいまのジャズがある、というところか。ってなわけで、良い演奏でした。

Only Trust Your Heart
ボサノバで。この歌詞の意味はなんだろうね。彼を好きになったらお星様やお月様の言うことなんか聞かないで、自分の気持ちを信じて、というのが高木里代子さんの解釈。ちゅうまさんは「好きな男が浮気したりろくでもないやつでこれからどうしようかなあ、とおもったときに、信じることが出来るのは自分の気持ちだけだ」という感じだそうだ。多様に解釈される歌詞を書く詩人に乾杯。

Autumn Song
オリジナル。

Spain
ご存じチック・コリアの名曲。僕が始めて高木さんのピアノを聞いたときの曲がこれだったような気がする。彼女の十八番である。カデンツァからスローバラードでアランフェス協奏曲 Concierto de Aranjuez の頭のところを演奏して、それを二回繰り返した。うーん。そのあと、強烈なリズムとメロディで切れのいいチックコリアのフレーズが入る。チックコリアはこの曲の最初の録音ではフルートにリードを取らせ、そのあとアルトサックスが入るバージョンも行っており、またBobby McFerrinとの演奏もいくつかあるが、優れたものがおおい。Al Jarreauとの演奏も良い。どの演奏も胸に迫る。これは大変な名曲。高木里代子のピアニズム爆発でした。この曲に関してはバイオリンとの競演も聞いてみたいし、サックスとの絡みも興味があるところだ。

フォービートから16ビートのフュージョンをへて、ハウスにと流れていく日本のグルーブの運命みたいなものを考えると、日本のポップス界はちょっと緩いんじゃないと思っていたら、ちゅうまさんが「最近歌を習いに来る若い子がジャズにあまり興味がないので、Jポップを教える必要があって、聞いているのだけど、最近のJポップはなかなかすごい。テンションコードたっぷり使ってるし、ジャズよりジャズって感じもある」という話。新しく音を聞く感受性が生まれてきているのだと楽観的に思う。まあ考えてみれば、昔から矢野顕子さんとかがいたわけだからねえ。


ステージが終わった時に、年上の知り合いでアマチュアのジャズトランペッターが席まで挨拶に来る。恐縮しながら「え、高木さんと知り合い?」と聞くと、「いや慶應出の若いピアニストだ、というので友達と聴きに来た」とのこと。慶應のジャズ好きのなかで人気を出していって欲しい。

終了後渋谷に。道玄坂をあがりジャズライブのお店KOKOへ。水曜日はジャムセッション。ミュージシャンは山中良之(Ts)高橋聡(P)志村洋一(B)滝幸一郎(Ds)。時々訪ねるのだが、バップが好きなジャズミュージシャンがあつまる。KOKOはチャーリー・パーカーの名曲にちなんだ。サックス、ギター、フルート、ドラム、ベース、ピアノとアマチュアからプロまであつまって、どんどんジャムセッションをしていく。うまい人が多いというか、かなりのレベルでジャムセッション出来ないと参加できない感じがあって、その緊張感が面白い。僕はボーカルなのでその緊張感はないが、いろいろなミュージシャンと演奏すると楽しい。この日はちょとお客が引けた後に到着。僕はSatin DollBody and Soulを歌う。ちゅうまさんはGirl Talkを熱唱。うまい!!

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山中さんは僕のサックスの師匠でもある。ドラムの滝君は外国からジャズやソウルのミュージシャンが来ると指名がくるほどの腕前。ちゅうまさんとはまえからの知り合いで、挨拶をする。ピアノの高橋さんがちゅうまさんに「僕、一度伴奏をしたことがあるのですが」と声をかけてくる。

KOKOは

http://www3.point.ne.jp/~ko-ko/

そのあと赤坂のマヌエラに。
ちゅうまさんはベーシストの大角 一飛(オオスミカズヒ)さんに挨拶。明日ヒルトンホテルの仕事が一緒だとか。

http://www.littlemanuela.com/

Just Friends
Satin Doll
Pennies from Heaven

を歌って終了。

久々にながながと遊んだ夜でした。
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by naohito-okude | 2009-09-17 16:40 | Jazzライブ
9月15日
「ユビキタスコンテンツショーケース2009」で講演とシンポジウムがあり、発表をした。

http://xtel.sfc.keio.ac.jp/jp/2009/07/2009.html

ユビキタスコンピューティングが普及して、コンピュータの姿が僕たちの日常生活から消えつつある。ラップトップコンピュータはそこら中で見かける、と思うかもしれない。しかし、実際には無線でインターネットにつながっていろいろなことにネットワークを活用している。こうした活動を行うためには、一昔前であればコンピュータをおく「コンピュータ室」とケーブルを部屋に引き回す工事が必要であった。

コンピュータが僕たちの生活環境に埋め込まれているのが現在なのだが、僕たちとコンピュータとの関わり合い方は実はそれほど変わっていない。人間とコンピュータとが出会う場所をインターフェイスと言うが、ここのデザインはコンピュータが目に見える形で存在していた時代と変わっていない。

もっと自由に楽しくインターフェイスの場所をデザインすることが出来れば情報を活用した我々の生活は根本から良い方向に変わっていくのだ。こうした領域をあつかうのがインタラクションデザインと呼ばれる分野なのだが、ここがなかなか良くならない。

たとえば情報家電というものがある。これはテレビならテレビにコンピュータが目に見えない形で埋め込まれている。ユビキタスコンピューティングの成果だ。だが使いにくいとかそもそも使ってみたい気持ちが起きない、とか買ったけれども使っていない、というのが現状だろう。ボタンの沢山付いたリモコンを操作しても楽しくないし、めんどくさい気がするだけだ。インタラクションのデザインが出来ていないとはこうゆうことである。

この問題をいかにして解決していくか、の方向性について講演をした。場所は目黒区の八雲というところにあるJASMAC 八雲というモダンな一軒家で結婚式場につかわれている場所である。家の中で展示をおこなうというのがコンセプトである。ユビキタスコンテンツとはKMDの稲蔭さんを研究代表とするプロジェクトで5年前にCRESTの研究支援で始まった。CRESTというのは、社会的・経済的ニーズの実現に向けて、戦略的に目標を設定して、研究対象をきめ、その結果が社会に大きなインパクトを与えるイノベーションとなることが期待されるプロジェクトを支援する仕組みで国(文部科学省)が設定するものである。結果が学術のみならず国民の生活向上に貢献することが期待される。Core Research for Evolutional Science and Technologyの略である。

稲蔭Crestは5年目を迎え今年がその最終年である。僕は理論構築を担当していて、その成果取りまとめに向けての発表である。細かいところはこれから大学院のBlogやXtelというこのプロジェクトで開発した新しいコンピュータ基盤に関して論じるBlogでこれからしばらく書いていく。

http://xtel.sfc.keio.ac.jp/theory/

http://www.ok.kmd.keio.ac.jp/

流れを簡単に紹介すると、インダストリアルデザインを生み出したと言っていいレイモンド・ローウィとアップル社のマックのデザインを始め、多くのハイテクデザインを生み出してきたフロッグデザイン社のハルトムット・エスリンガーについて同じ流れをくむモダニズム美学であることを説明して、それに異を唱える形でポストモダン美学を打ち出したエトレ・ソットサスの作品の説明をした。そのあと、コンピュータが日常生活から消えていくユビキタスコンピューティングの説明をして、消えてしまったコンピュータとインタラクションする方法がまだ開発されていないことを説明した。稲蔭CRESTは見えなくなってしまったコンピュータにどのようなインタラクションを与えるかが、研究テーマであり、多くの作品を作ってきた。その作品を解説しながら、新しい美学を生み出していく必要性とそのときの指針になりそうなブルーノ・ムナリのデザインについて解説をした。
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その後展示を見た。Pannaviというフライパンにセンサーを埋め込んで、料理をつくるアクションを直接コンピュータとインターフェイスして、コンピュータから情報を提示。それを見ながら料理を行う作品が下記の写真。
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センサーを埋め込んだフライパンをつくるために3Dプリンターで型をつくり、それを砂型として、アルミのフライパンを鋳造。形は良くできたが結構重いのが今後の課題。取っ手にXtelという無線基盤を埋め込み3軸センサーを入れた。フライパンの温度とフライパンをつかって料理するアクションが直接コンピュータとインターフェイスをする。プロトタイプとしてはまとまっている。ここ半年、僕の指導の下に大学院生チームで試行錯誤を繰り返してきて形になり、特許も申請したので、blogで公開することにする。意外にうまくできて感動的。


次にPlantrの展示を見る。これは京島のフィールドワークをもとにつくった作品。京島は墨田区にある。第二次世界大戦の戦災の被害が少なかったため、大正時代からの昭和初期の長屋などがのこっている。ここでのフィールドワークを二年ほど繰り返して、京島の住民が気軽にあつまってお酒を飲み食事をする場所に注目した。草花の手入れを皆でしながら、テーブルに座っておしゃべりをして酒を飲み食事をする。こうした活動が自然に行われている場所にコンピューティング環境を持ち込もうというこころみ。

草花の手入れを誰かすれば、手入れをしている人を認識して記録する装置とそうした情報を皆で閲覧しておしゃべりを弾ませる掲示板、そしてテーブルと椅子。機能としてはすぐにも作れる気がするが、テレビモニターとカメラとセンサーをむき出しで置くと、酒でも飲んでおしゃべりしようという雰囲気がまるでなくなる。なので、人々が楽しく酒を飲める環境にふさわしいデザインを工夫した。

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それからが結構大変で、テレビの枠を外し、別に枠を作り、台を鉄パイプで作った。学生が自分たちで溶接、塗装、パテ加工をおこなった。また草花を手入れするときに手入れしている人を撮影したり情報を表示したりする新しい仕組みを3Dプリンターでつくり、そこに小さな液晶モニターを分解してとりだした液晶ディスプレイを埋め込んだ。結果、普通に楽しい場所にユビキタスコンピューティングを埋め込みつつも、宴会を行い草花の手入れをするという行動をインターフェイスとする仕組みのプロトタイプが出来上がった。プラ模型を作る工作から電子工作、木工に溶接とあらゆる技術を動員したのだ。3日展示をして動作確認と修正をして、これをいろいろな場所に持ち出したい。ディスプレイがデジタルサイネージではなくて、お店のメニューを知らせる黒板のようになり、それがインタラクティブだという収まりをしたところが非常に良かった。写真では一見何処が新しいかわかりにくいが、いま大型テレビのデザインはこうした環境と人々の生活にとけ込むような配慮が全くされていないので、外側を外して作り直す作業はけっこうな技術と労力がいるのである。

PS
デザイン雑誌『AXIS』の神吉さんがblogでショーケースの報告を書いてくれた。どうもありがとう。
AXIS
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by naohito-okude | 2009-09-16 09:07 | 講演会・展示会

野田俊介さん

エキサイト社社長、野田俊介さんKMD来訪。

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野田俊介さんとはもう15年近いおつきあいだ。SFCで昔コマースアレーというプロジェクトを行っていた頃である。Webで商店街をつくってお店を集めて物販を行うというものだ。

http://www.calley.co.jp

http://www.nttdata.co.jp/release/1995/121200.html

いま振り返るとそう珍しくはないだろう。だが15年前である。WWWが少し普及して、加えてようやくMosaicが登場した頃である。そのころ凸版印刷と共同で日本でほぼ最初の商業モールをつくった。

http://bell.jp/pancho/terminology/hyper-dictionary/50-ha/ha/figs/vmall.html


そのときに街のイメージを貼り付けて、それをクリックすると別のイメージにつながるという、イメージ間のハイパーリンクを作成した。これもひょっとしたら世界でも最初の試みの一つだった気がする。まだ世界中でイメージをつかったWebサイトの少なかった頃で、cool site of the dayという場所で「今日世界で一番クールなサイト」に選ばれたこともある。

その頃(1995年)、ジム・クラークが日本に来て、個人的に会う機会があった。シリコングラフィックス (SGI)という3次元グラフィックスのコンピュータをつくる会社の創業者であり、1990年に上場して大金持ちになっていた。SGIは2006年に倒産する。1993年に彼はシリコングラフィックス社を辞める。小型の端末と高速のネットワークが次のコンピューティングの世界をつくることが、いまの経営陣にはわからないのだ、と述べていた。なにか新しい事業がないかと探していると、マーク・アンドリーセンらの作ったブラウザMosaicを見つけたという。彼にメールを送り、モザイクコミュニケーションズをつくった。後に、ネットスケープコミュニケーションズと改名して、1995年に上場した。その後マイクロソフトとのブラウザー競争に敗れ、1998年にはAOLに合併と言うことになった。モザイクは開発した大学が知財の所有を主張したが、開発した人間を採用して新たに作り直した。「特許よりも人材だ」と話していたのが印象的だった。

1996年、ヘルシオン(医療ソフトサービス会社)を創業し、これも1999年2月に上場させた。この会社は1999年5月にマイクロソフトが出資していたWebMDと合併した。ジム・クラークにかんしては、マイケル ルイス『ニュー・ニュー・シング』がでているが、とにかく狩猟民族の起業家の典型のような人だ。彼と話をしてネットスケープを慶應に貸してもらい、イメージを多用したサイトを作った。暗号技術の問題で日本に輸出が禁止されていた時期だったので、慶應で先行的につかうことができてビジネス活用のための研究を他に先駆けていくつも行うことが出来た。サイバーパブリッシングジャパンはその成果だ。

その試みを中小企業にも展開しようというのがコマースアレーである。メンバーの一人が、大学時代の友達が伊藤忠テクノソリューション(ITC)に勤めているので、彼からコンピュータを買おう、というので野田さんを紹介されたのが最初の出会いである。

おそらくは日本では誰もまだ手をつけていなかったWebの商業利用の実践を大学のプロジェクトで経験した学生のなかには楽天の創業にかかわって取締役を行っている学生もいるし、楽天にはいっていろいろとプロデュースした後、やめて映画のプロデューサーを行っているものもいる。

野田さんは東京大学の工学部で石井威望先生の研究室で勉強をしていた。石井先生は東大を定年で退官し、そのあとSFCで教鞭を執られた。日本の科学技術政策の多くに深く関わってこられた大先生であり、僕はすでにSFCで教えていたが、10年間ほどいろいろと石井先生から学び、第3の師匠と思っている。野田さんは卒業後、伊藤忠に入社し、このころはCTCに出向していた。その後伊藤忠に戻り、伊藤忠インターネットという会社の設立を行った。僕はそのお手伝いをすることになる。

伊藤忠インターネットはもう無いが、アメリカのSUNが直接投資をした会社である。この会社を作り、商社とインターネットの関係を探ろうというのが課題であった。ある程度方向が見えたところで、伊藤忠の役員会で僕が概要を取締役に説明をした。繊維から鉄鋼まで総合商社の領域はあらゆる経済活動に渡る。そのなかでインターネットがどのように活用されていくのかのビジョンを丁寧に説明した。当時の社長は室伏稔氏であった。繊維部門と情報部門が社内コラボレーションをしてBtoBのネットワークをつくり、ファッション産業の川上から川下までを繋ぐプロジェクトをプロトタイプしたりした。いまのファストファッションの走りである。

だがこのあと伊藤忠は経営危機に直面する。そして、社長が丹羽宇一郎氏に変わる。テレビ番組で伊藤忠の戦いがドキュメンタリーで放送されていてその中で野田さんを始め伊藤忠のインターネットメンバーの姿を見たりした。1999年にCTCが上場し、その資金と丹羽氏の伝説的なマネージメントがあわさり、伊藤忠は業績を回復していく。そんなときに、また野田さんと仕事をするチャンスがきた。現在の社長である小林栄三氏が、情報産業部門長と情報産業ビジネス部長を兼任されていて、ネットの森という社内横断的なプロジェクトを発足させたのである。社内からインターネットビジネスを行いたいと希望する社員を募集したのだ。そのプロデューサーであり、時としてプレイングマネージャーでもあったのが野田さんである。僕は野田さんに呼ばれて、全体の説明を受けて、戦略を立てた。基本的にはインターネットがビジネスに活用できるとはどのようなことなのかの知識のレベルを合わせることを行った。当時のコンサルティングの資料がまだ手元にのこっているが、いわゆるインターネットベンチャーではなくて、総合商社としてインターネットにどのように取り組んでいくかの基盤をつくってから、個別のプロジェクトに移っていった。この体制が非常に効果を生んでいくことになる。

とはいえ、最初の1年はめざましい結果は出なかった。そこがリアルなモノをあつかう商社ビジネスと違うところだ。またコンシュマー・ビジネスに不慣れなところもあって、スローな出だしであった。伊藤忠ファッションシステムの仕掛けたマガシークが最初に飛び出した。伊藤忠はファッションを扱う商社として巨大であり、その倉庫にある商品をスタイリストがコーディネートして雑誌と提携して通販を行うのだ。

http://www.magaseek.com/


2年目に入って段々と成果が出てきて、いくつかのプロジェクトは伊藤忠からスピンアウトして起業をし、IPOも果たした。野田さんがしっかりと戦略を立案して、人材を育て、成果を生んだのである。野田さんは最年少で部長になり、小林氏は社長となった。

Exite社の買収もこのころの仕事だ。アメリカで売りに出ていて、金額も手頃だったので伊藤忠が買収した。インターネット上のメディアを持つと言うことはかなりの効果があり、消費者向けのビジネスに不慣れだった総合商社の人間がいろいろなことを学ぶことが出来た。経営にはあまり口出しをしていなかったようだが、最近業績が悪化して、野田さんが伊藤忠からExite社の社長へと転出したのである。


http://www.excite.co.jp/

現在立て直しのまっただなか、というところだ。

さて、総合商社とインターネットは実はあまりうまくビジネスシナジーが出ていない。総合商社は日本の基幹産業に深く関係をしていて、大きな投資額が必要なプロジェクトを支援したり、物流に必要な資本を肩代わりしたりする。インターネットが出てきてこうした機能が「中抜き」されるのではないか、という恐怖をもったことがそもそも僕と伊藤忠のビジネスの始まりだったのだが、結果的にはそのようなことはなかった。また株取引をインターネットでおこなう市場が登場したとき、伊藤忠はカブドットコムに関わったが、ここは他の株取引サイトとことなり、自前でサーバーなどをもっていた。初期投資はかさむが、取引が伸びて行くにつれて利益が上がっていった。ここはIPOで大きな利益を出す。このあたりが商社とインターネットの本当のシナジーだと思っている。

実は総合商社がインターネットとビジネスで向かい合っていくのはこれからだ。それは商社が支援してきた大規模な企業が流通業者や小売店ではなくて、顧客に直接向き合うことが必要になってきているからだ。この方向に経営の方向を変換できたところが生き残っていく。GEやPhilipsといった企業が会社の形を大きく変えているのもこの方向を目指しているからである。アメリカやヨーロッパの会社は会社組織の中に消費者と向き合うセクションを作った。だが、日本の製造業にはこの変身は難しいと見ている。ここが商社の出番である。総合商社は非常に日本的な会社組織だと言われているが、基本的には情報と資本で企業の連携をスムースに行わせる仕事を行っていると言っていいと思う。なので、消費者と向き合う形で日本の基幹産業のビジネスを支援するところにかなりの可能性があると見ている。

藤本 隆宏氏の著書に『日本のもの造り哲学』がある。藤本氏は日本的企業の特徴を「摺り合わせ」技術にみていて、部品をモジュールとして、それを組み立てるアーキテクチャーをデザインして、そのなかにコアとして「摺り合わせ」を埋め込む戦略が必要なことを提案して知られているが、この本ではさらに「消費空間」という考え方を提案している。

何かを作ろうと考えると、素材、設計、製造、と異質のレイヤーの間で作りたいものの「設計図」を「転写」していく必要がある。この転写が難しい。そこをいかに上手に行うかが競争力の決め手になるわけであるが、製造した後、消費者がそれを利用する「消費空間」があるという。ここに設計図を転写することがないと21世紀のもの作り産業は生き残れないという。その転写を製造業が行うことは難しいだろ言う、と藤本氏は言う。こここそ商社が活躍するところだ。素材からエネルギーから工場の設備から倉庫まで商社が積極的に関わってきた。「消費空間」に製造業を展開する情報と資本の支援を商社が行ってはどうか、と藤本氏は提案しているのである。


Web2.0という言葉があったが、その次にくる大きな波はリアルな空間と情報空間を連結させて行く流れだ。人々が生活している物理的な消費空間をどのように情報空間と資本で強化していくのか。総合商社がインターネットを活用してスケールの大きなビジネスを行っていくのはこれからだろう。
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by naohito-okude | 2009-09-13 13:13 |

CEDECの講演を聴いて、あるゲーム会社のプロデューサーが 霞町スタジオに相談に来た。いま非常に伸びている会社なのだが、このままだと高い成長率が維持できない状況になると予測されているため、新しい制作手法で生まれるイノベーション、ゲーム会社の場合はオリジナルタイトル、を事業につなげる方法を相談したいという話。話を聞く。規模にびっくり。ゲーム市場は取り込めるお客はもう取り込んでしまっていることを実感。だから、高い成長率は望めない。なので、ゲームの面白さを残して、新しい市場にどう出て行くか。

しばらくミーティングをして、ブレストをしてみたが、結果として、面白いプロジェクトになりそう。今後NDAを結んで市場分析をして方向性を考える。顧客の経験を直接デザインする僕の手法だと普通は市場調査はいらないのだが、可能な市場はほとんど取ってしまったとすると、どこに向けて開発するかの方向性は決めておかないと、イノベーションしたけれどもう市場は占有されていたということになる。

イノベーション、運営モデル、課金設計を同時に考える。なるほどね。開発期間は1年。完成後の運営(状況に合わせて作り直していく)の契約も含めると3年くらいのプロジェクト。年内に企画書を完成させるスケジュールで進めることになる。まだわからないが、うまくいけば、来年1月から本格始動。
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by naohito-okude | 2009-09-08 23:33 | ミーティング

芦沢賢一君

一緒に仕事をしている芦沢賢一君と霞町スタジオでミーティング。
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彼はSFC2期生で大学院修了後NTTに入り、その後NTTDocomoに移り、起業。いまはその会社を離れて、KMDで博士課程で勉強をしながら僕のオフィスの活動を助けてくれている。デザイン思考2.0という新しいコンサルティングのパッケージを開発しているのだが、その打ち合わせ。デザイン思考はIDEOの『創造する会社』がでて、次に僕の『デザイン思考の道具箱』がでて、いまでは東京大学のコースにもなっているアイデアを作る方法である。アイデアを作る方法について体系的に説明できる珍しい方法で、このやり方を身に付けるとアイデアやイノベーションが比較的簡単に「誰にでも」つまり天才でなくてもできる。



僕の会社オプティマではここ数年間この方法についてデザイン思考ワークショップというコンサルティングを行ってきた。ところが最近イノベーションは出来たと思うけれど、それを事業化できない、という相談がいくつか来た。話を聞くと一つは会社の事業戦略をまえもって決めてないことが問題だ。イノベーションに価値があったときはプロダクトアウトのように、イノベーションをしてからビジネスを考えようという態度があった。だが簡単にイノベーションを行うことが出来るとなると、イノベーションが経営戦略と一致する必要性、あるいはイノベーションを実際の事業に展開する方法が必要となる。

もうひとつはプロトタイプを作る新しい方法、Tinkeringというが、それがうまく開発プロセスに組み込めないことである。デザイン思考は新しいアイデアを作り出す方法、これをIdeationというが、そこに限定していま普及を始めようとしている。だがそれだけではイノベーションが現実化しない。



このような動きに答えるように、今までのデザイン思考のワークショップに加えて、経営戦略のコンサルを行い、次にデザイン思考でイノベーションを行い、そのあとそれを事業に結びつけるプロセスを考えた。ある程度クライアントと検討をしてめどが立ったので、一般的なパッケージにしようというわけである。

午前中一杯かけて、方向性を決めて、今週中にパッケージを完成させることにした。
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by naohito-okude | 2009-09-08 23:17 |