奥出直人のJazz的生活


by naohito-okude

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都市と21世紀の産業の形

10月9日 金曜日

森ビルで勉強会

高橋潤二郎先生主催で六本木ヒルズのライブラリーのある49階へ。NTTドコモSさん、早川書房juiceの担当の小都さん、アカデミーヒルズのNさん、Sさんとメディアの方向性や都市生活のあり方についてのお勉強会。2時間30分ほど議論をする。途中で石井威望先生がちょっとだけ顔を出されたのでご挨拶。ミーティングの後『デザイン思考の道具箱』を作ってくれた早川書房の小都さんとDocomoのSさんと喫茶店でコーヒーを飲みながら、雑談。小都さんにそろそろ『デザイン思考の道具箱2.0』を出したいという話と、彼が最近編集長をしている新書Juice向けに、に売れそうにもないけど、「実践的文章読本」というテーマで書きたいとおもっているんだけどという話をする。売れそうにもないというのは、新書のHow To本は出来ないくらい難しいことを誰でも出来るように書くことが主流だから。誰でもしっかりとした文章を書くことが出来るようにはなるけれど、その技法を身に付けるのは大変、だから手取り足取り教えます、という誠実な文章読本を書きたいと思っているので、ちょっと相談。

友人と夕食
新丸ビルで友人と6:30分から会食。100年近い歴史をもつ関西の会社の3代目で、今回、会社の主な機能をアジアに移すという。もう日本では経済的に成り立たないという。日本は開発も工場も整理する。すると経営的には成りたつ。これは空洞化といわれるが、日本にはしっかりとした能力のある人間が残る。なので、そのあと何かしっかりしたことを日本でしたいと雑談。いまの開発を海外に出せば、次のことをする余力はある。このあたり、友人の会社だけではなくて、パナソニックトヨタもここが勝負のポイントだと思う。かなり高度なエンジニアリング力も日本特有のものではなくなっているのだ。だとすればその先を日本で積極的に展開すればいい。高度なエンジニアリング力を活用する場所を変えるのだ。このイノベーションの方向変更がいまの日本では非常に難しいが、意識の問題でやればどうってことはない気がする。彼の会社も規模は小さいがニッチェでは世界有数の能力をもっているのでこうした会社が魅力的になる時代になって欲しい。


お店はもう10年以上ひいきにしている恵比寿笹岡が最近出したセコンド。値段は安いが、このフロア全体が庶民的な感じのお店がいっぱいある。丸ビルの高いお店があるところとはとはちがった感じ。友人との雑談の結論はとても面白い。うまくいけば、差し障りのない範囲で僕の次の本『デザイン思考2.0』で紹介しようと思う。
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by naohito-okude | 2009-10-13 07:33 | ミーティング

トレたま 登場

慶應大学メディアデザイン研究科の博士課程で僕の指導の下で研究をしている石橋修一君と瓜生大輔君の作品が最近テレビ東京のトレたまで紹介された。7月7日に石橋君のサウンドキャンディが、10月6日に瓜生君のPanaviの取材を受けた。両方ともCRESTの研究成果として先日展示したものである。下記の写真は10月6日の取材風景である。

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あわただしく取材が行われて、その日に放映なのだが、映像の作り方やアナウンサーのコメントが非常に参考になった。


サウンドキャンディ

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サウンドキャンディ
http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/trend_tamago/tt_132.html

このおもちゃの面白いところは、単体でこうした遊びが出来る玩具をつくるには現状のコンピューターでは能力不足だ、という点にある。作り始めて4年くらいになるので最初に思いついたときはもっと技術的には遠い話であった。最近になってようやく来年くらいにはできるかなというところである。学会で発表して、賞もとっているのだが、それを実際のおもちゃまでに持って行くプロセスが問題である。僕はこのプロセスも評価する仕組みが必要だと思っている。だが、なかなかそこは難しいところだ。いままでの軌跡については下記のURLを参考にして欲しい。

http://www.sound-candy.com/

平成19年度(第11回)文化庁メディア芸術祭で最終審査会まで進んで、エンターテイメント部門審査委員会推薦作品にも選ばれた。だが、ここから先がなかなか難しい。技術が市場にでてくるまで成熟するまで何年かかかる。アートではなくて日常世界の中で普通に使われるおもちゃという位置つけだからだ。幸いにも国のプロジェクトであるCRESTのなかのプロジェクトの一つとして研究を継続することが出来た。しかし、いつもこのようにうまくいくとは限らない。最終的なプロダクトから逆算して要素的な技術を評価する仕組みがあればいいのだが。「研究」の時はある程度予算が付き、商品化のときもそれなりに道はある。だがその間を支援する仕組みがない。20世紀の産業は考えてThinking(研究)つくるDoing(製造)の二層構造だからだ。しかし、考えてプロトタイプを作って考えて、納得がいったら作るという新しい産業構造が生まれつつある。Thinking>Making>Doing三層構造である。これが21世紀の産業だ。Makingを支援する仕組みをつくった組織なり制度が次を制することはたしかなのだ。

さて、Panaviは修士の生井みずきさんと瓜生大輔君の研究だ。瓜生君はMoopongというかつての名作を作ったメンバーであり、かつ自分の作品も多い。サウンドキャンディも石橋君と彼の手になる。基本的な考え方は同じで利用者の身体的な動きをコンピュータに伝達して、コンピュータの方はそれを元に情報処理を行い、その結果を利用者に戻す。

http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/trend_tamago/post_243.html

取材に当たったアナウンサーの前田真理子さんのコメントが面白かった。

http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/toretama_syuzai/post_234.html


フライパンが重い、温度が下がりにくい、具が入ると表示が見にくいというものであった。まさにその通りである。下記の写真は撮影の時のキッチンにPanaviを装着したところ。

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当初設計した機能を実装すると現状になる。これはDoingの状態ではなく、Makingの状態である。ここからもう一度反復をする。これをItrationという。現状は3次元プリンターで取っ手をつくり、フライパンの形もつくった。それをもとに砂で型をとり、センサーをいれて、アルミを流し込んだのだ。コンピュータに振動センサーと温度センサーで繋がるフライパンのできあがりである。これの軽量化は大きな課題である。

だが、このプロトタイプを作ることで、一流の料理人が「ここは強火で」といっているビデオ映像があれば、それをもとにプロセスを素人でも「まねる」ことができる。上手にまねることが出来ると、格段に味の違う料理が出来る。カルボナーラをつくったことがあるだろうか?普通はなんだか卵とじみたいになってしまう。イタリア料理の著名なシェフの落合務氏はDVDも出しているが、そのDVDを再生しながら、Panaviをつかって、落合氏の指示どおりに作ってみると、たしかにひと味違う。このプロトタイプを使って何人もの大学院生にカルボナーラに挑戦してもらった。

みな楽しそうに作っていた。うまくいくときもあれば行かないときもある。しかし料理は楽しい。画面表示にもセンサー付きのフライパンの中にもない、「料理を楽しむ経験」がたしかにデザインされていた。これを専門用語で「コンセプトのプルーフ(証明)」という。ここが証明されたらあとは使いやすくする、これは専門用語でユーザビリティ(Usability)という、の向上に向かっていけばいい。その様子は下記のURLのビデオを見て欲しい。これはこのblogでも紹介したユビキタスコンテンツショーケースでの記録だ。

http://vimeo.com/6774238

通常の開発のプロセスだと、使いやすさが優先すれば料理を楽しむ経験のデザインがおろそかになり、料理の経験を優先させると、たいていの場合技術的な問題で使いにくくなる。このあたりを試行錯誤するのがMakingなのだ。そして、このMakingのコストが劇的に下がっていることが新しい。3Dプリンターとあたらしい電子回路がなければこのような工作をして製品のコンセプトをプルーフして、使い勝手を向上させる作業を短期間で一気にすすめることは難しいのである。

ちなみに大企業の「デザイン部門」はほとんどがプロダクトデザイナーなので、こうしたインタラクションのデザインはできない。またインタラクションが出来るデザイナーの多くはWeb制作会社で働いているが、かれらはプロダクトのデザインは出来ない。こうした作業を一つのグループでおこなってしまうこともMakingのための大切な条件なのである。デザイン思考2.0として僕が考えているのもこの問題である。

さて、プロトタイプもここまでできると、特許を出すことが出来る。2009年9月14日に国内特許を出願完了している。panaviとは、家庭のキッチンでプロの味わいを再現するためのフライパンである。センサー・アクチュエータ・無線通信機能を内蔵したフライパンと、フライパンから送られる情報を処理するコンピュータ・システムで構成されている。このシステムが適切な温度や時間・工程の管理、味付け、フライパンの動かし方などを調理者にナビゲートする。この作業を通じて、プロが経験的に身につけている感覚と技を素人が学習することを支援する。また、panaviはふつうの調理道具と同様に一般家庭のキッチンで使用が可能である。ここが非常に大切な点だ。
毎日の食事作りの際に繰り返して使用することで、調理者自身がスキルアップしていく。

いずれにしてもトレたまに紹介していただき、楽しい経験になった。テレビ東京のスタッフの方々、どうもありがとう。
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by naohito-okude | 2009-10-08 10:34 | デザイン
戦略デザインの方法
Strategic design from Products to Companies

次の講演者はジョセフ・ホラキス Joseph Forakis氏である。富士通のNEXDの開発を担当したという。自己紹介によると、彼は1962年にニューヨークで生まれた。現在ジョン前田が学長をしているRISD(the Rhode Island School of Design)を1985年に卒業。専攻はIndustrial Designであった。その後ミラノのドムスアカデミー(the Domus Academy)に留学してそのあとはミラノに住んでいる。 1993年に Joseph Forakis Designをミラノに設立。その後、1999-2002にはモトローラ社デザインディレクターをつとめ、主なクライアント:スウォッチ、スワロフスキー、LG電子、マジスなどである。

http://www.forakis.com/

スタジオは規模が小さいブティックスタジオを意識して維持している一方で、マルチディシプリナリー・インターナショナルコラボレーションを上手に行っていくことを心がけており、2つの柱があるという。一つは規模の小さなイタリアの家具照明デザイン中心の会社へのデザインの提供である。感情表現が豊かな「家」関連のデザインを心がけているという。もう一つはマルチナショナルで戦略的に動く会社への戦略コンサルティングである。テクノロジー中心のSumsong, Panasonic, LGといった会社や、Yamahaなどが日本ではクライアントであるという。モトローラ、ロジテックのマウス、スウォッチ アイロニーシリーズからスウォッチトークのデザイン言語開発に参加し、インターフェイスデザインも行うという。

こうした企業とのプロダクトを見せながら、プロダクトデザイナーのプレゼンは色ぽいプロダクトなどの写真を並べるのが普通なのですが、今日の話はこうした普通のプレゼンテーションはほんの少しで、考えることについて議論したいと述べて、経営戦略ツールとしてのアイコニック・デザインを説明した。方法としては僕が考えているデザイン思考2.0と同じ問題意識をもっているものであって、イノベーションの方法論にとどまっていたデザイン思考を超える試みであった。

ちょっと詳しくなるが説明しておこう。

デザインという行為はイノベーションそのものである。イノベーションを行うのがデザイナーの仕事なのだ。では何処にイノベーションを行うべきなのか。それは企業が顧客に対してauthenticityを提供する分野であるという。正直に自信をもって顧客にサービスを提供できる分野でイノベーションをおこなう。そのためにはまずマーケティングで普通に行われている強みと弱みの分析をするという。どのような企業文化をもっているのか、をしらべ、単純なミッションステートメントを超えて、他の会社と差別化したサービスやプロダクトを提供できる領域は何かを見つけ出すのだという。

そのためのプロセスがなかなか分かりやすかった。調査と分析を二つに分けている。

Research&Anaysis1:

企業文化を強化して進化させる方法を考える。つまり自分の会社のサービスや製品の市場をしっかりとみて、その可能性を考える。普通の言葉で言えばある市場に対して複数の企業は同じ方法でアプローチしていることがほとんどだ。そのときに違う方法で市場にアプローチできないかを自社の強みを元に考えるのである。これは古典的な競争戦略であるが、こうしたマクロ的な視点をデザイン思考に取り入れたときの効果は大きい。なにをどのようにイノベーションするのかを決めるのである

Reseach&Analysis2

これはミクロなアプローチである。顧客は何をしているのかを民族誌を活用したり文化分析を行ったりして調べる。これは従来のマーケティングリサーチの枠を超えたものでなくてはならない。こうした調査に基づいてイノベーションを何度も繰り返す。そのときに注意することは「破壊的技術」の存在である。マーケットを壊す技術は現在の市場とは別のところからやってくるのだ。

「破壊的技術」とはどのようなものか。これは非常に大事な概念なので僕から説明を付け加えておこう。『イノベーションのジレンマ』クレイトン・M・クリステンゼン(Clayton M. Christensen)が述べていることだが、高度に進んだ技術が市場で勝利をおさめるわけではない、ということである。クリステンゼンはハードデスクを例として説明している。高速で大規模で、そして高価なハードデスクの開発が進んでいたときに、スピードが遅くてあまり容量がないハードデスクが登場してきて市場を席巻した。その理由は消費者は小型で安価なハードデスクを普及し始めていたパーソナルコンピュータに搭載したいと思っていたのだ。つまり、高度な技術が成功するのではなくて、顧客のニーズに応えるテクノロジーが市場で勝利するのだ。多くの場合、それは普通で少し性能が悪い技術であることが多い。だがそれが市場を破壊する。なので破壊的技術なのである。iPodやiPhoneはその典型だし、パーソナルコンピューターのCPUもその産物である。このことが分かっているハイテク企業経営陣は驚くほど少ない。

次に、直接・非直接の競合を調べるという。現在ノキアの競合相手はもはやかつてのモトローラやLGではなくなってきている。現在のは敵はアップルである。誰と競争するのかを決めることが大事だというのだ。

まとめると、会社の文化のマーケットの戦略の間にコアバリューがある。ここでイノベーションをするべきで、ここを戦略的イノベーションの場所と呼ぶ。ここでイノベーションを続けることでブランドが生成される。簡単なようだが、普通の企業は他社と製品において差別化することなく、同じ市場にむけて、広告戦略を立てて商品を売ろうとしている。だがこの戦略はもうふるいのだ。

イノベーションはハードイノベーション(Hard innovation)ソフトイノベーション(Soft innovation)に分けられる。第一は顧客に約束した価値をいかにして生み出すかというイノベーションである。プロダクトでもプロダクトを使って得られる経験でもかまわない。大事なことは約束した価値を生み出しそれを顧客に届けることである。そのためには市場を知らなくてはいけないし、約束した価値を届けるための技術開発も必要である。また製品の設計を行い製造するプロセスをしっかりと管理することも必要になる。インタラクションデザインプロダクトデザインパッケージデザインにも心を配らなくてはいけない。こうした活動をハードイノベーションとよぶ。これは分かりやすい。だがハードイノベーションを行っても、約束した価値を顧客に届けることは難しい。別の種類のイノベーションが必要なのだ。これをソフトイノベーションと呼ぶ。約束した価値を顧客に伝えるためのコミュニケーションコラボレーションの方法のイノベーションが必要なのだ。それは従来小売店舗のデザインとか、サービスデザインとか、広告・広報、あるいはマーケティングと呼ばれてきた分野がカバーしていたところだ。アップル社はハードイノベーションとソフトイノベーションを巧みに組み合わせている典型である。

今回富士通のために、富士通の強みを生かす技術を活用しつつ、きちっとした顧客調査も行って、新しいユーザーシナリオをつくった。そのキーコンセプトを紹介したい。ストーリーボードを作りアイデアを技術的に作る方法で19のユーザーシナリオをつくった。それぞれビジネスプロポジション(商品を買ってもらうための明確なメッセージ)をもつ。デザインモノからサービスへ、そして経験を経てブランド育成の方法へと進化していく流れが必要である。

以上をふまえて提示されたキーコンセプトが以下である。

シームレスソサエティ

都市のインフラは古いモノから新しいモノまでが混在している。この間をスムースに移動する仕組みを作る。

2Dプロダクト
電子ペーパーをつかって表面を目的によって変える。二次元だが多様な使い方が可能なプロダクトとなる。

Materialized Digital Teritory

デジタルインターフェイスを実際のフィジカルオブジェクトに置き換える。

Digital Backlash
デジタルで出来ることは終わってしまった。

Avoiding Emmission
テレビ電話などを活用する。

結論的にはごく普通のコンセプトであったが、広告代理店や広告代理店出身のコンセプト提供のコンサルティングビジネスと根本的に異なるところは、彼はこのコンセプトでプロトタイプまで作れることである。プロダクトデザイン力を見てもそれほど突出しているとは思わないし、イノベーションコンサルティングの内容も気の利いたシンクタンクであれば行える。だが、この二つを一つのサービスとして行うというところがジョセフ・ホラキスの特徴だ。ここは積極的に学びたいところである。

最後にイタリアのデザイン誌Interniでデザイン思考の特集があり彼が紹介されているということが付け加えられた。

http://www.internimagazine.it/
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by naohito-okude | 2009-09-19 16:54 | 講演会・展示会
六本木アクシスギャラリーでデザイン思考の講演会で話をした。

http://www.iid.co.jp/seminar2009/

デザイン思考2.0について語る

デザイン思考がようやく注目されいろいろなところでイノベーションワークショップが行われるようになった。だが実はイノベーションそのものはそれほど難しくない。大切なのはどの領域でイノベーションを行うべきかという戦略的思考と、イノベーションをどのように実現するかという実践の戦略である。つまりイノベーションの方法であるデザイン思考そのものは戦術に過ぎない。

IDEOや多くのアメリカ・イギリス系のデザイン思考コンサルタントと僕が代表をしているオプティマが提唱するデザイン思考との違いはここにあって、『デザイン思考の道具箱』のなかで哲学とビジョンと述べているところがそれだ。ここのところを経営戦略としてしっかりと充実させることが必要である。また経営戦略といっても、競争力を高めて自分だけ高い利益を上げる、ということが社会的に許されなくなっている。企業は社会的責任を問われている。さらにいま社会が直面している環境や高齢化社会にどのように対応していくのかといったことも大切だ。またこうしたことがビジネスチャンスを生む。

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講演では新しく登場してきている移動体中心のコミュニケーションインフラストラクチャーが可能にする新しいビジネスのチャンスとしてサービスや経験の充実をあげ、その領域でイノベーションを起こすための戦略を説明した。そのあと領域をきめてデザイン思考をいかに実践するかを説明した。民族誌的調査に加えて、Tinkeringという新しい方法も紹介した。従来「作って考える build to think」と言われてきたことと同じだが、新しい工作機器の登場で顧客が実際に手に取ってみることが出来るレベルのプロトタイプを開発できるようになってきている。ここまでイノベーションに関わる人は責任を持つ必要がある。そして、実際にイノベーションしたサービスやプロダクトを「産業化」しなくてはならない。そのために、多くの関係する企業とコラボレーションを構築して行かなくてはいけない。この作業もある意味イノベーションである。

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具体的な目的を戦略的に設定することでイノベーションは「ビジネスモデルは何か」というおなじみの質問に答えることが出来る。その方法を身に付けないと、デザイン思考を学んでも自己満足のアイデア創造ワークショップで終わってしまうのだ。

「デザインイノベーションによるクラウドサービスビジネスの進化」

富士通 森岡 亮(もりおか まこと)

今回の講演は森岡さんに依頼されたのだが、彼の肩書きは富士通デザイン株式会社 デザイン企画開発部 部長(これが本職だ) 兼、富士通株式会社 サービスビジネス本部 デザインプロデューサー 兼、富士通株式会社 ソフトウェア計画本部 開発企画統括部 デザインプロデューサーである。富士通は巨大産業で縦割りであり、研究所もデザイン部門も別の会社である。これでは総合的なサービスをデザインすることはほぼ不可能に近い。なので、森岡さんは兼務をして自分自身の中でコラボレーションが出来るような体制を作り出している。

発表はトラスティッドクラウド時代のデザインについて。生活、仕事の方法をデザインする。富士通のような巨大企業でデザインに何が出来るかを考えてきた。現在人間がコンピュータ環境の中でくらしている。そのとき、ハードのプロダクト、ソフトのデザイン、ファシリティのデザインを一体になってどのように行うか?についての発表。基本的なデザイン思考の方法である調査、ペルソナ、プロトタイプ、設計を何処に活用するか。

足下のマーケットを見抜くという方法を提案していた。戦略立案としてわるくない。そこから問題の本質の理解と気付きをおこなってデザインプロトタイプを行うという。プロダクトのデザインではなくてサービスのデザインへ、つまり体験価値、思いやり、コミュニティ価値を大事にしたいという。ここまでの話をマーケティングのミーティングで聞いたならば、なるほど、そうか、で終わるところだ。またこうした戦略的なことをいって、仕事が済んだと思う大企業の経営企画の人間は多い。だた、森岡さんはデザインの専門家である。戦略が決まると、具体的なプロトタイプを作る作業は得意である。

この立場から例に挙がったのは3つあった。

その1:金融店舗フィールド

金融店舗は新しいサービスを提供することが求められている。銀行の意味がかわり、きめ細かな利用者サービスが求められているにもかかわらず金融の店舗デザインは問題が多くて、トラブルも絶えない。実際、観察をしてみると「わかりやすさ」、「ホスピタリティ」、「コミュニケーションスタイル」の問題が多い。ここをデザインする可能性がある。いくつかのスケッチが紹介された。

その2:これからのオフィスのあり方

オフィス什器メーカーと共同で作業をしたが、よく考えると違うアプローチがある気がしている。アイデアを作ることは方法であり、一度覚えればどんどんでてくる。とすればそうした作業がらくにおこなえるようなオフィスをデザインすればいい。アイデアがどんどん浮かんでくるオフィスの環境をデザインする。もう一つはコミュニケーションの物理的なコストと環境負荷を高解像度のテレビ会議システム導入で改善する。そのための最適なデザインを考えてみたい。

オフィスの例に関してはそのとおりだ。ごく普通にオフィスの環境の再デザインをする時期に来ている。オフィス什器やコンピュータハードウェアを売っている時代ではない。


その3:コラボレーション環境を作る。

実際に顧客や他企業とコラボレーションしないとイノベーションは産業化しない。そのためにコラボレーションモデルを作った。それがNEXDプロジェクトである。具体的にはデザインテンプレートをつくり、顧客とビジネスにしていく。とりわけ、ITを意識しない体験価値のデザインを主眼とする。たとえば食のデザインを考えて、コラボレーションをおこない、あたらしいサービスのプロトタイプをつくるとか、ネットインフラを意識させないサービスをセンシング、リアルタイム、高速処理でおこなう、という種類のモノである。こうしたサービスのニーズはどこにあるのか?が一番の問題だ。つまりここで経営戦略の問題に戻っていくことになる。

具体的なビジネスの可能性をどうやって作っていけばいいかに関して、インスピレーションがわく話であった。
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by naohito-okude | 2009-09-19 07:29 | 講演会・展示会

芦沢賢一君

一緒に仕事をしている芦沢賢一君と霞町スタジオでミーティング。
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彼はSFC2期生で大学院修了後NTTに入り、その後NTTDocomoに移り、起業。いまはその会社を離れて、KMDで博士課程で勉強をしながら僕のオフィスの活動を助けてくれている。デザイン思考2.0という新しいコンサルティングのパッケージを開発しているのだが、その打ち合わせ。デザイン思考はIDEOの『創造する会社』がでて、次に僕の『デザイン思考の道具箱』がでて、いまでは東京大学のコースにもなっているアイデアを作る方法である。アイデアを作る方法について体系的に説明できる珍しい方法で、このやり方を身に付けるとアイデアやイノベーションが比較的簡単に「誰にでも」つまり天才でなくてもできる。



僕の会社オプティマではここ数年間この方法についてデザイン思考ワークショップというコンサルティングを行ってきた。ところが最近イノベーションは出来たと思うけれど、それを事業化できない、という相談がいくつか来た。話を聞くと一つは会社の事業戦略をまえもって決めてないことが問題だ。イノベーションに価値があったときはプロダクトアウトのように、イノベーションをしてからビジネスを考えようという態度があった。だが簡単にイノベーションを行うことが出来るとなると、イノベーションが経営戦略と一致する必要性、あるいはイノベーションを実際の事業に展開する方法が必要となる。

もうひとつはプロトタイプを作る新しい方法、Tinkeringというが、それがうまく開発プロセスに組み込めないことである。デザイン思考は新しいアイデアを作り出す方法、これをIdeationというが、そこに限定していま普及を始めようとしている。だがそれだけではイノベーションが現実化しない。



このような動きに答えるように、今までのデザイン思考のワークショップに加えて、経営戦略のコンサルを行い、次にデザイン思考でイノベーションを行い、そのあとそれを事業に結びつけるプロセスを考えた。ある程度クライアントと検討をしてめどが立ったので、一般的なパッケージにしようというわけである。

午前中一杯かけて、方向性を決めて、今週中にパッケージを完成させることにした。
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by naohito-okude | 2009-09-08 23:17 |