10月10日 土曜日
シンガポール
7時40分すぎ 成田エキスプレスで成田空港へ。
品川駅はいろいろと変わって素敵なお店も多いが、成田エキスプレスの発車する横須賀線のホームは昔とあまり変わらない。下記は成田エキスプレスの写真。めずらしくもないが、たまには電車の写真も撮ってみる。
いまちょっと考えている仕事の関係もあってシートをよく見るが、イノベーションはなかなか難しいなあ。といってもこのままじゃあねえ。
新幹線もそうだけれど、重厚な皮の椅子、みたいなコンセプトをどうにかしたい。皮のソファーと木製のカードボード家具、まあいってみれば三越など老舗の百貨店の家具売り場の感じ。もうすこしモダニズムに踏み込めないだろうか。
空港は混んでいる。20歳の時に始めてアメリカに留学したが、出発は羽田空港。1年たって戻ってくるときが成田空港。ニューヨークから成田までのパンナムの直行便で初めてのジャンボだった。それから5年くらい前まで25年間、何度飛行機に乗ったことか。
9/11の事件が僕にとっては非常に大きなショックで、それ以来思うことがあって、どうしても出席する必要がある学会にたまに行くくらいで、他には海外に出ることを出来るだけ止めていた。ある学会で、MITの石井裕さんが僕の学生に「奥出さんは来ないの?」と言われたと学生が言ってくるくらい、できるだけ何処にも行かないようにしていた。
だが、最近シンガポールに行くようになって、半年で3回目。空港を眺めてみていると世界の飛行機の旅事情が大きく変わってきていることに気がつく。
基本的にスーツケースで移動することが大変。2つスーツケースをもって、空港におりてレンタカーを借りて、目的地に動く、といった旅行が普通だったが、今みていると、かんたんな機内持ち込みの鞄にすべて詰め込んで動くのがいい感じだ。いま普通に旅行している人からすると、何を今更かと思うかもしれないが、簡単に移動する、という感覚が楽しい。まるで船のクルーズにでかけるように重装備なのは良くない。
一番大きな違いは飛行機のチケットの発券だ。数年まえに電子チケットになった。もうチケットをなくす心配はない。デジタルでコンピュータ上にあるのだから。そして、手荷物だけだと自動的にチェックインできる。この簡便さも飛行機の意味を次第に変えていくだろう。
またラウンジの使い方も変わってきている。くつろいだり、お酒を飲んだりではなくて、仕事がしやすくなっている。だが5年前のビジネスビジネスといったかんじ(ビジネスセンターや会議室)ではなくて、無線LANと電源さえあれば何処でも仕事は出来る。軽装備なのだ。これもしばらく飛び回っていない僕としては新しい感じだ。今回はANAのラウンジだが、非常に仕事がしやすすかった。
ずいぶん前に関西新空港の最初の基本構想を作った人に話を聞いたことがある。世界はハブ空港をつくり、そこから小さな飛行機で移動するという考えが主流で、それにしたがってデザインをしていたのだが、当時の関西経済界の重鎮だった方が大反対をして、この最初の構想を作った人はあきれて、机をひっくり返して帰ったそうだ。未来を見る能力のない人間が意思決定をした罪は大きい。成田や大阪の新国際空港がハブとして機能していないのは確かだ。それでもまあ大分成田も変わった。ターミナルのデザインも随分と明るくて綺麗になった。
ANAに乗る。B767−300。
シンガポール行きは今回シンガポール航空が混んでいたのでANA。やはり、最近の仕事上の興味から、ビジネス席の椅子のデザインを見る。迷いがあって中途半端。迷う理由はよく分かる。いったい誰がのるのか、どのように機内で過ごすのか。重装備の船舶的なデザインから脱出しているのはよく分かるが、椅子として独立してしまって、なんというかとりつくところがない。また持ち込みの鞄をしまうところもない。お行儀良く座っていなくてはいけない。これで8時間のフライトはどうだろうか。このあたり、気になるところだ。
いま航空産業は大再編期にある。20世紀後半の世界のグローバル化はコミュニケーションのデジタルネットワークによる発達にくわえて、物流の大革命があった。それがコンテナ輸送だ。荷物がコンテナに詰められて世界中を移動する。荷揚げが機械化される。21世紀におこっていることは、Web2.0やクラウドコンピューティングによるデータサービスの発達と、人間の移動の変化である。簡単に言えば気楽に経済的に長距離を飛行機で移動する。この感覚は5年前ですら無かった。車輪の着いた荷物一つで世界中を気楽に動き回る。コンテナ船が20世紀後半をかえたように、簡便な航空旅行による人の流れが世界を変える予感がする。その意味でJALの経営危機は時代の流れかもしれない。
産経新聞のWebニュースで、下記のような記事があった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
前原誠司国土交通相は14日午前、首相官邸で平野博文官房長官と会談し、羽田空港の国際ハブ(拠点)空港化や日本航空(JAL)の再建策について協議した。前原氏は羽田空港の国際ハブ化について「成田空港の機能を羽田に移すのではなく、成田も今まで以上に活用されるように努力していく」と重ねて説明した。
羽田空港の国際ハブ化については、前原氏が13日に最優先で整備する考えを表明し、成田空港のある千葉県や関西国際空港のある大阪府から反発の声が上がっている。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091014/plc0910141226008-n1.htm
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハブ化を想定した空港計画をことごとくつぶしてきて、いまさらなにを、という感じだが、JALの破綻も含めて、航空業界の国際化を考えるいいチャンスだ。しかし、ハブ化というのは航空行政が深く関わってくるので、このあたりまで踏み込んでの話なのかな。羽田と大阪がハブ化するとかなり状況は変わると思う。
シンガポールのチャンギ空港はそうした時代を先取りした空港として有名だ。この空港についてはまた改めて記したい。羽田空港がこのような形で発展してハブ空港にならず、関西空港がハブになるチャンスをみずから放棄して、今の状態になっている。さあ、どうする?
空港は竹中工務店がゼネコンで非常に大きくかかわっているが、最近の改修で実際にデザインを担当している会社を挙げておく。彼らの仕事は面白いと同時に、こうした空港を設計できる能力をみにつけたデザイン事務所になってみたいものだ。エンジニアとデザインとサービスが統一された空港や建物はまだまだ開発の余地のある分野である。デザインを担当した会社を挙げておく。いずれ詳しく検討したい。
第1ターミナル改修デザイン担当
http://www.woodhead.com.au/
http://www.a61.com.sg/
第2ターミナル改修デザイン担当
http://www.gensler.com/
第3ターミナル担当
http://www.som.com/content.cfm/changi_international_airport_terminal_3
シンガポール
7時40分すぎ 成田エキスプレスで成田空港へ。
品川駅はいろいろと変わって素敵なお店も多いが、成田エキスプレスの発車する横須賀線のホームは昔とあまり変わらない。下記は成田エキスプレスの写真。めずらしくもないが、たまには電車の写真も撮ってみる。
いまちょっと考えている仕事の関係もあってシートをよく見るが、イノベーションはなかなか難しいなあ。といってもこのままじゃあねえ。
新幹線もそうだけれど、重厚な皮の椅子、みたいなコンセプトをどうにかしたい。皮のソファーと木製のカードボード家具、まあいってみれば三越など老舗の百貨店の家具売り場の感じ。もうすこしモダニズムに踏み込めないだろうか。
空港は混んでいる。20歳の時に始めてアメリカに留学したが、出発は羽田空港。1年たって戻ってくるときが成田空港。ニューヨークから成田までのパンナムの直行便で初めてのジャンボだった。それから5年くらい前まで25年間、何度飛行機に乗ったことか。
9/11の事件が僕にとっては非常に大きなショックで、それ以来思うことがあって、どうしても出席する必要がある学会にたまに行くくらいで、他には海外に出ることを出来るだけ止めていた。ある学会で、MITの石井裕さんが僕の学生に「奥出さんは来ないの?」と言われたと学生が言ってくるくらい、できるだけ何処にも行かないようにしていた。
だが、最近シンガポールに行くようになって、半年で3回目。空港を眺めてみていると世界の飛行機の旅事情が大きく変わってきていることに気がつく。
基本的にスーツケースで移動することが大変。2つスーツケースをもって、空港におりてレンタカーを借りて、目的地に動く、といった旅行が普通だったが、今みていると、かんたんな機内持ち込みの鞄にすべて詰め込んで動くのがいい感じだ。いま普通に旅行している人からすると、何を今更かと思うかもしれないが、簡単に移動する、という感覚が楽しい。まるで船のクルーズにでかけるように重装備なのは良くない。
一番大きな違いは飛行機のチケットの発券だ。数年まえに電子チケットになった。もうチケットをなくす心配はない。デジタルでコンピュータ上にあるのだから。そして、手荷物だけだと自動的にチェックインできる。この簡便さも飛行機の意味を次第に変えていくだろう。
またラウンジの使い方も変わってきている。くつろいだり、お酒を飲んだりではなくて、仕事がしやすくなっている。だが5年前のビジネスビジネスといったかんじ(ビジネスセンターや会議室)ではなくて、無線LANと電源さえあれば何処でも仕事は出来る。軽装備なのだ。これもしばらく飛び回っていない僕としては新しい感じだ。今回はANAのラウンジだが、非常に仕事がしやすすかった。
ずいぶん前に関西新空港の最初の基本構想を作った人に話を聞いたことがある。世界はハブ空港をつくり、そこから小さな飛行機で移動するという考えが主流で、それにしたがってデザインをしていたのだが、当時の関西経済界の重鎮だった方が大反対をして、この最初の構想を作った人はあきれて、机をひっくり返して帰ったそうだ。未来を見る能力のない人間が意思決定をした罪は大きい。成田や大阪の新国際空港がハブとして機能していないのは確かだ。それでもまあ大分成田も変わった。ターミナルのデザインも随分と明るくて綺麗になった。
ANAに乗る。B767−300。
シンガポール行きは今回シンガポール航空が混んでいたのでANA。やはり、最近の仕事上の興味から、ビジネス席の椅子のデザインを見る。迷いがあって中途半端。迷う理由はよく分かる。いったい誰がのるのか、どのように機内で過ごすのか。重装備の船舶的なデザインから脱出しているのはよく分かるが、椅子として独立してしまって、なんというかとりつくところがない。また持ち込みの鞄をしまうところもない。お行儀良く座っていなくてはいけない。これで8時間のフライトはどうだろうか。このあたり、気になるところだ。
いま航空産業は大再編期にある。20世紀後半の世界のグローバル化はコミュニケーションのデジタルネットワークによる発達にくわえて、物流の大革命があった。それがコンテナ輸送だ。荷物がコンテナに詰められて世界中を移動する。荷揚げが機械化される。21世紀におこっていることは、Web2.0やクラウドコンピューティングによるデータサービスの発達と、人間の移動の変化である。簡単に言えば気楽に経済的に長距離を飛行機で移動する。この感覚は5年前ですら無かった。車輪の着いた荷物一つで世界中を気楽に動き回る。コンテナ船が20世紀後半をかえたように、簡便な航空旅行による人の流れが世界を変える予感がする。その意味でJALの経営危機は時代の流れかもしれない。
産経新聞のWebニュースで、下記のような記事があった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
前原誠司国土交通相は14日午前、首相官邸で平野博文官房長官と会談し、羽田空港の国際ハブ(拠点)空港化や日本航空(JAL)の再建策について協議した。前原氏は羽田空港の国際ハブ化について「成田空港の機能を羽田に移すのではなく、成田も今まで以上に活用されるように努力していく」と重ねて説明した。
羽田空港の国際ハブ化については、前原氏が13日に最優先で整備する考えを表明し、成田空港のある千葉県や関西国際空港のある大阪府から反発の声が上がっている。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091014/plc0910141226008-n1.htm
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハブ化を想定した空港計画をことごとくつぶしてきて、いまさらなにを、という感じだが、JALの破綻も含めて、航空業界の国際化を考えるいいチャンスだ。しかし、ハブ化というのは航空行政が深く関わってくるので、このあたりまで踏み込んでの話なのかな。羽田と大阪がハブ化するとかなり状況は変わると思う。
シンガポールのチャンギ空港はそうした時代を先取りした空港として有名だ。この空港についてはまた改めて記したい。羽田空港がこのような形で発展してハブ空港にならず、関西空港がハブになるチャンスをみずから放棄して、今の状態になっている。さあ、どうする?
空港は竹中工務店がゼネコンで非常に大きくかかわっているが、最近の改修で実際にデザインを担当している会社を挙げておく。彼らの仕事は面白いと同時に、こうした空港を設計できる能力をみにつけたデザイン事務所になってみたいものだ。エンジニアとデザインとサービスが統一された空港や建物はまだまだ開発の余地のある分野である。デザインを担当した会社を挙げておく。いずれ詳しく検討したい。
第1ターミナル改修デザイン担当
http://www.woodhead.com.au/
http://www.a61.com.sg/
第2ターミナル改修デザイン担当
http://www.gensler.com/
第3ターミナル担当
http://www.som.com/content.cfm/changi_international_airport_terminal_3
#
by naohito-okude
| 2009-10-14 16:18
| デザイン